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見出しタイトル
ぎおん さんぼあ
 わが憧れのサンボア・バーのオリジナルコースター。
 もちろんちゃんとバーテンダーさんに頼み込んでいただいたものである。
 その時に頼んだカクテルに使われていたものを所望したのだが、わざわざ奥から新品を出してきてくださったのには感激!

 アルコール解禁年令に数年満たない頃から私の座右の書である『世界の名酒事典』の創刊号で知って以来、ずっと憧れていた店である。
 正確には寺町京極にある本店が紹介されていたのであるが。

 ここはまだ板に付いてないお洒落を決め込んだお兄ちゃんが、連れの女性にいいところを見せようとしてカッコつけに入れる店ではない。また情報雑誌を頼りにおねーちゃん連れでキャアキャアやってくる店でもない。だからといって、京の小料理屋や割烹にあるような“一見(いちげん)さんお断り”では勿論、ない。
 しかし、十年やそこらでは絶対ここまでツヤはでるまいと一目でわかる年季の入ったカウンターに座り、落ち着いているのにきびきびしたバーテンダーさんのムダのない動きと、ゆきとどいた心配りに接すると思い知るのである。「ここはガキの来るところではないのだ」と。

 カクテル一杯だいたい¥1000くらいからだから、老舗といっても価格的にビビル事はない。しかもアテというか、とびきり美味しいクラブハウス風のホットサンドを出してくれるので初めての人は大抵びっくりする。小振りに見えるが実はけっこうボリュームもあって強い酒を入れるにも小腹を満たすにもちょうどいい。心憎いサービスである。
 それらすべてがまさに“紳士のための”バーなのだと客に納得させてくれるリンとした威厳があるのである。そう、まさにそこに立っているだけで客の方が敬意を払いたくなるような大ベテランの執事のごとしなのだ。だから勿論いわゆるオヤジ族も私はこの店では見たことがない。

 だからこそここで静かにグラスを傾ける自分にも誇りを持つ(かつ酔う)ことができるのである。これぞステータス!とまたひとしきりうなづいて、京都の夜に溶けてゆけるのである。
 男性諸君!まだ我々にも楽園はのこっていることに乾杯しようではないか。

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