私が四条通りにゆくと、必ずといって立ち寄ってしまうのがここである。京都の老舗らしく、近代的なビルなのにその玄関先は実に趣がある。しかも肩肘張らず、自然と中に誘い込まれるようにふらりと入ってしまうのである。
ここをよく訪れる理由のひとつに、そのショウアップとコーディネートの仕方による演出の見事さが挙げられる。なにげない陶器の小皿ひとつでも、さりげない小物を配することでそこに“和”の空間を意識させてしまう巧さ。陳列品のひとつひとつにアイデアと心配りがあり、さまざまな工夫を凝らしてある。
裏返せば値札のついた商品でありながら、見ていて楽しくて、ついついふと手に取ってしまってから「いかん、これは大切な売り物だったのだ」と気づくこともしばしばである。
目玉の飛び出るような金額の商品でも美術品の展示のようにけっして気取っていず、極端に言えばそれらですらひょいと手にとってじっくりと確かめることもできるのである。
つまりここにあるものは美術品クラスのものでも、あくまで日常に使われる道具の延長であるということをさりげなく語っているのだ。そのすべてがちょっとがんばれば家庭でもマネのできる範囲の素敵なインテリアコーディネートのお手本になっているのだ。
ひと枝の木の実、一輪の野の花をさりげなく、しかし計算されつくした配置で飾るその技はまさしく“茶道・華道”の応用である。そしてそれはすなわち“もてなしの心”なのだと、この店で使われる花や実がどんな小さなものでも、、すべて生花であることで気づかされる。