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  たちきち
たち吉といえば言わずと知れた和食器のトップメーカーのひとつである。そしてここ四条本店はビルがまるごとそのたち吉のショウルームだ。地上は3階までが陶器のたち吉エリアで、3階はたち吉のスペシャルエディションである“青嵐”や、なにかしらテーマにのっとった特別展示をやっている。もちろん、直接販売もしているので、一般的な価格の日常品から名だたる作家の手になる目玉の飛び出るような作品まで取り扱っている。

 私が四条通りにゆくと、必ずといって立ち寄ってしまうのがここである。京都の老舗らしく、近代的なビルなのにその玄関先は実に趣がある。しかも肩肘張らず、自然と中に誘い込まれるようにふらりと入ってしまうのである。

 ここをよく訪れる理由のひとつに、そのショウアップとコーディネートの仕方による演出の見事さが挙げられる。なにげない陶器の小皿ひとつでも、さりげない小物を配することでそこに“和”の空間を意識させてしまう巧さ。陳列品のひとつひとつにアイデアと心配りがあり、さまざまな工夫を凝らしてある。
 裏返せば値札のついた商品でありながら、見ていて楽しくて、ついついふと手に取ってしまってから「いかん、これは大切な売り物だったのだ」と気づくこともしばしばである。

 目玉の飛び出るような金額の商品でも美術品の展示のようにけっして気取っていず、極端に言えばそれらですらひょいと手にとってじっくりと確かめることもできるのである。
 つまりここにあるものは美術品クラスのものでも、あくまで日常に使われる道具の延長であるということをさりげなく語っているのだ。そのすべてがちょっとがんばれば家庭でもマネのできる範囲の素敵なインテリアコーディネートのお手本になっているのだ。

 ひと枝の木の実、一輪の野の花をさりげなく、しかし計算されつくした配置で飾るその技はまさしく“茶道・華道”の応用である。そしてそれはすなわち“もてなしの心”なのだと、この店で使われる花や実がどんな小さなものでも、、すべて生花であることで気づかされる。


 地下一階は洋食器の“アダム&イブ”と“リッチフィールド”のショウルーム。さらにその下にはアートギャラリーまで備えてさまざまな特別展示をしている。もちろん無料である。じっくりと観てゆくとたっぷり一時間は軽くかかる、意外な“寄り道スポット”である。

 余談だがたち吉の隣ビルの地下にある『天狗』は筆者がお気に入りのリーズナブルなのにサービス満点の居酒屋である。チェーン店なのだが、珍しく徹底した接客教育がゆきとどいていて、料理も美味いおすすめの店である。

■たち吉ホームページ
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