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京都、ことさら秋冬の仏閣は、陽が傾いてきたな…と思ったら“店じまい”の時間が迫っていると思っておいて間違いはない。筆者のように外回りばかりを鑑賞する人はともかく、中に入ったり上に上がってホトケ様をゆっくり拝みたいと考えておられるなら、もうこれくらい陽射しが低くなってきたらあわてた方が良い。時計を見ると、15時である。
まして山の上にいて、帰路が地上へ向かっているならソロソロ帰り道へ舵を切るべきだ。
かつて筆者がよく地理を知りもしないクセに、無理をおして比叡山の奥の院たる『横川中堂』へ向かった時は、おそらく既にこれくらいの時間にさしかかっていたのであろうと思われる。
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これらの写真はいずれも、当初の予定通りに『叡山ロープウェイ』の乗り場がある、ガーデンミュージアム比叡への道すがら撮ったもの。深い樹々の斜めから差し込む、すこし夕陽の色づきになりかけた陽射しが素敵なアクセントになっている。
上右の苔むして斜めになった石柱は、べつにわざとそうしているわけではなく、永年の経緯で雨で洗われながら道の土砂と共に崖道のフチからどんどん外側へ外側へと押し出された結果であると思われる。
等間隔で並んでいるはずだが、ところどころ抜けてるな、と思ってひょいと下を覗くと案の定、先に抜け落ちて落果している様子が見て取れた。
大雨の後などは道の端へは近づかない方が賢明である。落ち葉が積もってその端もイマイチハッキリしない感もあった。
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先の話の続きを述べるが、横川中堂にたどり着いた時点ですでに16時で閉門、“時間切れ”だった。つまり、店じまいされていたわけだ。そうなるとあとは帰るだけなのだが、場所が場所だった。
下界へ降りるための叡山ロープウェイ駅へ向かうバスは次が最終便。用事があるかよほどの物好きでない限りそんな時間までそこに居る人は少ないのだ、と気付いたときにはもう、待つしかなかった。
そしてバスがピストン輸送で戻って来るまで、辺りがどんどん暗くなって行く上に、夜風がどんどん冷たくなっていく寂しいバス停でかなり待っていた記憶がある。
もちろん無事に帰れたが、ヘトヘトになって帰り着いたという記憶しか残っていない。いくら交通が便利になっていても、知らない土地で無策・無理はいけないと骨身に染みた。
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逆に、ちゃんと交通手段の最終までの残り時間や歩くべき距離、日が暮れるまでの事をたっぷりの余裕を持って計画してあれば、山の美しい風景と、吹き渡る涼風を心ゆくまで堪能しながら、ひと足ひと足を楽しみながら帰路をたどれるのである。
昼間の、あの澄み切った空気は数時間後も濁らずにあったおかげで、まるで地形図でも斜めに観ているかのようなこんな景色も、果ての果てまで見通せている。
あいにくここに案内板はなかったので、最も向こうに見えている山がどこのなんという山なのかまでは分からないが、ここから見えてる限りは、そうとう高い山であることも確かだ。
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坂本側から東塔までの事を思うと、こちらはいかにもハイキングコース的なためか、やや裏道的な印象を受ける。もちろん、陽が傾いて一番賑やかな時間帯が去って、多くの観光客もすでに下界へ降りて人が少ないという事もあろうが。
坂本側からとは異なり、洛北・八瀬(やせ)へと降りるこちらのコースは、ロープウェイとケーブルカーを乗り継いで地上へ向かう。
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すでに陽はかげり、紅葉の艶やかさも少し落ちつきをみせているが、それでも高みから見下ろす秋の風景は格別である。向かう先のロープウェイ比叡駅の向こうには、盆地・京のまちなみが箱庭のように横たわる。
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ロープウェイ比叡駅はそのまま叡山ケーブル比叡駅でもある。乗り換えるにも、少し待ち時間があるのでせっかくだから展望台としてしつらえられた所から、京都洛中の街なみをあらためて鑑賞する。
樹々の間を見透かすようにさっきロープウェイから見えた景色が堪能できる。
画面の右が北。その中央を右倒しにYの字として左右に伸びているのが鴨川…厳密に言えば、Y字の足に当たる部分が鴨川、Yの左が賀茂川、そして夕陽を受けて光っている右が高野川である。その分岐点から画面右へ伸びる緑が下鴨神社のある『糺(ただす)の森』、その左斜め上にある緑の長方形が御所である。
ちなみに右手の紅いモミジがかかっている向こうに見える山が五山の送り火のひとつ、『妙』と『法』のある山々だ。もちろん、文字は左に向かって刻まれているのでこの角度からは見えない。
また、その山の向こうにある森が上賀茂神社の森、その向こうに吉田山、さらに大文字山がある。
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ケーブルに乗り換えて降下。坂本から上がってくる場合と大きく異なるのは、ゆく先が八瀬(やせ)という、京の奥座敷的な場所ということ。いにしえから釜風呂…つまり昔式のサウナ風呂が今も残る静かな山間の保養地だ。
そのため、ケーブルカーはふたたび山の中へもぐってゆくような印象がある。
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下山。ケーブル八瀬駅から徒歩で5分ほど歩いて叡山電鉄八瀬駅へ向かう。もう京都の街なかだ。あとはさっき上から見えた、賀茂川と高野川の合流地点、京阪電車の起点がある出町柳へ向かって、我が家のある大阪を目指すのみ───だが、その前に。
八瀬に来ておいて、このお店…『又寅』のしば漬けを買わずに帰るのは画竜点睛を欠く行為である。
その昔とあるテレビCMのお蔭で、食べたことがない人でも“しば漬け”の名前だけは知っていると言う程に日本中に知れ渡っている京漬け物の一つだが、千枚漬けやすぐき同様、意外に本当に旨いしば漬けはめったにお目にかかれない。
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Wikiによると、しば漬けとは『茄子やきゅうりを刻み、赤紫蘇の葉を加え塩漬けにした、京都の伝統的な漬物。すぐき、千枚漬と並んで京都の三大漬物と言われている。紫蘇の赤紫色が鮮やかで、酸味が強い。日本全国に普及しほぼどこでも売られている。
本来は「紫葉漬け」であり「紫葉」とは赤紫蘇のことである。京郊外の大原はシソが名産だったが、平家滅亡後に大原に隠棲した建礼門院(平徳子)が、里人の差し入れた漬物を気に入り、紫葉の漬物=「紫葉漬け」と名付けたという伝承がある。
本来の製法で漬ける場合は、熟成まで1年近くかかるとされる。現在は胡瓜や茗荷などを入れる事もあり、酢漬けにされるが、本来は茄子と紫蘇の葉、そして塩を用い、酸味は乳酸菌による乳酸発酵に由来するものだけで酢は使用しなかった。現在この酢を使用しない製法のものは「生柴漬」「生紫葉漬け」などという名称で販売されることが多い。』とある。
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筆者は発酵食品、ことに漬物ではヌカの古漬け、すぐき、キムチは言うに及ばず、普通の白菜の漬け物でもいわゆる“賞味期限”を大きく逸脱して乳酸発酵が始まったものが大好きで、ザワークラウトも自分でこしらえる。だから普通の漬物でも、わざとそうなるようにしむけてから食す。それだけに酢を使ったしば漬けなど言語道断。
だが有名漬物メーカーのものでも、しば漬けに関しては歯ざわりがイマイチなのだ。
茄子の漬物を嫌う人がその理由として上げるのが“歯切れが悪い”“咬むとギュウッと鳴る”というのがあるが、たしかにしば漬けはそうで、味が無くなるまで咬んでいてもまだ口に残るような品が多く、筆者もそういう意味であまり好みではなかった。───ここのしば漬けを試食するまでは。
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とにかく歯切れが良い。味や発酵の具合も勿論だが、こんなに次から次へと食べられるしば漬けは他にない。
日本一、すなわち宇宙一美味いしば漬けはコレだと断言できる。
しかもこの店、商売が巧い。ガンガン試食させる。『食べたら分かる』自信から来るのだろうが、たしかにその通りである。そもそも漬物は小さくてもそれなりに重量感があるのが欠点。だから『行きは味見で買うのは帰り』を売り言葉に、通りすがりの観光客に次から次へと試食を促す。
それだけではない。買う気になった客のハートの掴み方も見事。一人前的な袋の小売りは勿論やってるが、それの五倍を超える分量の『お得サイズ』を小分け用の袋付でも売っている。つまりどうせすぐ食べてしまうのだから、これで持ち帰ってから土産として分ければよい、という発想。───結局筆者はそのビッグサイズで買って帰ったが、そう時間も掛からずにキレイに完食してしまった。
ご飯の友としても優れているが、味のバランスがよいのでこれだけでもいくらでもつまんでいられるからである。
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今回、買って帰ったもの。上に乗っているiPhoneは4s。iPhone6 Plusに比べれば小さいが、それでもしば漬けの袋がどれほど巨大かがおわかりであろう。
右は延暦寺東塔で求めた交通安全のお守りなのだが、錫杖のヘッドのミニチュアまんまでカッコいいので衝動買いした次第。箱書きに拠れば『自動車のフロントにお立て下さい』とあるので、もしかしたらロールスロイスのヘッドマークのように使うのか?と思ったが、それはともかく金文字印刷のケースごと飾っても遜色ないので、フィギュア感覚で飾ってある。まあ、大事にしているのでバチは当たるまい。
そして下の惣菜は、延暦寺境内にある土産物センターで売っていたもの。いずれも美味でアッという間に酒のアテで消えた。他にもけっこうオリジナリティに富んだ土産があるので意外にあなどれず、山に上がるなり買い物荷物で一杯にしているオバサマ方も少なからずおられた。
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比叡山は確かに霊峰で襟を正し気を引き締めて向かうべき霊山ではあるが、あるいは旨いモンなど、買い物ありきのつもりである意味もっと気楽に上がっても良いのかも知れない。
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