ところが、である。温暖化のせいかどうかは知らないが、筆者が知る限り京都の秋はけっこう遅い。もっとも、秋の定義はひとそれぞれだ。緑・黄・赤と錦状態を好む人も多い。ちなみに筆者の好みの秋模様は“真っ赤っか”である。身体に、心に染み入ってくるほど赤・紅・朱、どっちをみてもあたり一面真っ赤でないと秋の京都に来た気がしない。
しかし実はこの条件は非常に難しい。というのは、その年の夏の具合と秋のはじめの天候に左右されるからだ。京都の夏は暑いが、水不足が続くと紅葉の主役であるモミジがちぢれてしまうのだ。おいでになった方は判るだろうが、京都に生えるモミジは葉が小さいのが特徴だ。(真偽のほどは判らないが、聞くところによると、このモミジを抜いてきて別の土地に移すと不思議なことに普通サイズになるのだそうである。)
さらに秋になってもいつまでも残暑が続くと、このちぢれがどんどんひどくなる。揚げ句に病葉(わくらば)となって枯葉と化してしまうのである。逆にベストのコンディションは、夏とは言っても夕立などの“おしめり”がちゃんとあって、9月下旬になればほどほどに涼しくなり、さらに秋が深まって夜に急に冷え込むような晩が何度もあればしめたものだ。