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きょうのあか/その二“みむろどじ”

 穴場というのはなんにでもある。えてして“誰も知らない”とか目立たない場所というのがその理由だったりするが、実際これが観光地やお店の場合は失礼な話である。地元やその道の人にしてみれば誰でも知っている、というのがほとんどだからだ。たしかにメジャー・マイナーの度合いというのはある。かつて筆者が学生当時まさにマイナー、超がつく“穴場”だと思っていた『鈴虫の寺』も『あぶり餅』も、雑誌non-noに林某のエッセーが載るなりもう無茶苦茶全国的メジャーになってしまったからだ。

 まだ京都に市電が走り、京阪電車が賀茂川沿いの地上を走っていた、筆者が学生の頃は嵐山でさえ今ほど観光地臭くなかった。いや、観光地には違いないのだが、タレントショップのように鼻につくような下品な商売臭さはなく、風情と情緒はちゃんと残っていた様に思う。

 とはいえ、超メジャーの影になったおかげで毒されずに情緒が残ったという場合もある。ここらへんが京都の奥深さというか、探せばいくらでもまだまだ良いところが見つかるから、京都ぶら旅行脚がやめられないのである。

 今回ご紹介する三室戸寺のある宇治も、ちょっと立地的に同じ京都でありながらややマイナー。

 というのは、宇治そのものへの交通としてはJR奈良線と京阪が挙げられるが、メインとなる京阪電車でも宇治は京阪本線の中書島(ちゅうしょじま)という駅で宇治線に乗り換えてゆく“支線”であり、中書島駅はかなり京都寄りなのに2000年春まで特急が停車しなかった。しかし働きかけがあったのかどうかは判らないが、中継駅の特急停車によるアクセス強化と、同時期に新たにつくられた『源氏物語記念館』などから見ると宇治市は新世紀を機にものすごく観光に力を入れ始めたように思う。

 それでも京都の中心部よりはやはり混み具合的には少ないので、この由緒と魅力ある土地を上手に巡って楽しんでいただきたい。

 さて表題の三室戸寺は、その宇治のさらにひとつ手前の駅なのでますます穴場ということになる。
 最寄り駅はまんま、“京阪宇治線 三室戸寺”。駅からほぼまっすぐに東へ1キロほどてくてく歩くと山にさしかかる頃に着く。

 筆者はたまたま目的の宇治駅直前に気が変わって降りたので予備知識も全くなかったが、あとで調べると天台宗の古刹で、西国第10番札所なのだそうだ………が、それは無宗教主義者の筆者には関係ない。ここでご紹介したいのは、この寺の境内の美しさである。

 入り口を入るとじきにオプションのように『与楽苑』という庭園が右手に現れる。この庭園、筆者の見るところかなり計算された庭園だと思う。というのは、植えられている植物が寺社の庭園としては実にバラエティに富んでいて、モミジ自体もさまざまな品種を植えてあることに気がついたからだ。
 品種を異ならせることによって、紅葉の時期がずれる。そのおかげで同じ紅葉でも紅さのレベルや色合いに深みが増し、錦状態そのものが変化に富んだものとなる…どうもそのあたりを計算してあるように思えるのだ。
 この庭園だけでも結構楽しめるが、いったん道を戻って少し坂を登ると寺の境内へと行けるので必ずいっていただきたい。実際にお会いしたわけではないので断言はできないが、かなりここの和尚は花好きらしい。
 筆者が訪れたのは11月も終わり頃の紅葉の時期だが、桜にツツジにアジサイと本当にさまざまな花木が植えられていて、年中なにがしかの美しい植物を楽しめるようになっていることに気がついたからだ。(枯山水の庭園まであるらしいが、そちらは今回はパスしているので次回は訪れてみたい。)

 さらに階段を上がりきったあとに本堂の前庭に当たることろにズラリと並んでいたのは数しれない大きな瓶(かめ)の行列。覗いてみるとハスである。つまり夏の頃はこれがいっぱい咲いているというわけだ。その右へ目をやるとあるのが三重の塔。美しさはご覧の通りである。しかもこれだけのスポットなのに、隣駅の宇治のように観光客の行列にウンザリすることもない。じつにありがたいことである。


 気まぐれを起こしたおかげで得た最大の収穫は、それまでは“秋の紅葉というのは真っ赤っか”というのが筆者の定番だったのが、ここに来てからは「錦も良いな」と思うようになったことである。

 追記をひとつ。左の写真はスズメバチの巣ではない。その下にぶら下がっているのはこの寺で買えるお守りの、ミニチュアの草鞋(わらじ)であり、願いが叶った人がお守りを奉納したものをまとめたものがこのスズメバチの巣のように見えるカタマリの数々である。このカタマリ、このコーナーだけではなく金堂のまわりをこんな調子で囲んでいるのだ。

 
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