なんでも、昔西陣に住まっていた商人が両腕に激痛を覚えて動かなくなってしまったので、こちらのお地蔵様に願を掛け続けたところ、満願の日に夢枕にお地蔵様が立ったとか。
いわく「おまえは前世で人を呪ってわら人形に釘を打ち込んだが為に今その報いを受けているのだ」とおっしゃって血だらけの釘を二本差しだし、「…だがこうして私が抜いてやったからもう大丈夫だ」と言われたところで目が覚めた。痛みはウソのように消え、身体は元に戻ったとか。
以来、この石像寺は釘抜きさんと呼ばれ、訪れる人々は痛みのある患部から“釘”を抜いてくださいと願い、願いが叶うとみなくだんのセットを奉納してお礼とするのだ。壁面いっぱいの額はその霊験のあらたかさを示すものだ。訊けば、古いものから交換してゆくのだという。
この日も茶髪の若い女性が真剣にお百度を踏んでいた。なにとぞその想いが叶うことを祈る。