豊臣秀吉の永遠の女房といえば“ねね”である。この歴史的良妻が晩年を過ごした寺として有名なのが高台寺(こうだいじ)。20年ほど前は他と変わらぬ、むしろ地味なくらい静かなたたずまいの寺とみやげ物の店があるだけのかいわいだったのだが、10年ほど前にずいぶんハイカラなクラフト・ショップの居並ぶ小じゃれた町並みに変わり、また高台寺の住人だったねね=北の政所を偲んでか、若い女性客をひきつけているようだ。そして今その道は“ねねの道”と呼ばれている。
しかし実はその通り道はもともと高台寺の境内であった。それほど高台寺はひろく大きな寺だったのである。
さて、そんな“ねねの道”の東側には高台寺公園と呼ばれるちょっとした公園がある。その向かい側に表題の“石塀小路”という露路の入口がさりげなく口をあけているのだが、人の流れに対してあまりにも地味なのと道が途中でZ折れているためか見通しが利かないからか、そうと知らない人は不思議と誰も入ってゆこうとしない。