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ひらのじんじゃ
 このコンテンツでもとりあげているが、梅の名所として近畿じゅうの受験生の神頼みに忙しいのが北野天満宮である。
 しかしその梅の名所の斜め向かいというか、紙屋川という細い川を挟んで100メートルほど西に桜の名所でジモティに知られる平野神社があることを知る人は少ない。
 地図で見る限り敷地そのものは北野天満宮の3分の2程度だが、本殿がフツーサイズなので通り抜けできる敷地に約40種500本と言われる桜が植えてある。写真は本殿から東側を望んだものだったと思う。この右手方向に花見もできるスペースが設けてあって、ジモティとおぼしき人たちが円山公園に比べればずいぶんおとなしめの宴会を開いていた。
 まあ宴たけなわとなれば多少はハメもはずすのだろうが、円山公園と違って街なかでもあるしおそらくは集まる人も“その場限り”ではないからあまり行儀が悪いとそのあとの近所づきあいにも響くのだろう。おかげで門外漢である筆者でも彼らの横をすり抜けつつ、それなりに桜を愛でることができた。
 筆者は日本の生んだグラフィックデザインの極みである家紋が大好きである。おとなりの北野天満宮が菅原道真の“梅鉢(うめばち)”であれば、当然この平野神社は桜である。

 だが天満宮そのものがまるでチェーン店展開のように全国にあって、梅鉢マークもありきたりであるのに対して平野神社の桜紋はとても新鮮でかわいい。

 自分で撮影しておいて今更だが、本殿の写真を改めてよく見ると、十六菊の紋入りの垂れ幕を使っているからには御所ともつながりのある由緒でもあるんだろうなあ…とか思っていたら、なんと資料によれば平安遷都の際に奈良から移築したといういわく付きだった。桧皮(ひわだ)で吹かれた屋根もなかなか美しい曲線を描いているのと、その前で手を合わせる婦人が絵になっていたから撮影したのだが、この本殿の屋根の構造も“平野造(または比翼春日造)”と呼ばれるほど特殊なものだった。
 まさに“ぶら旅”にふさわしい隠れたスポットだったのだ。ヒット!


 ここの枝垂れ桜は花も小輪でなんとなく枝にもまばらについているために桜独特のけぶるようなボリュームや華やかさはないが、かえってそれが利休好みとでもいうか、いかにも京の茶席に似合いそうな風情を持っている。



 最後に、神社に付き物とも言えるグッズもここ平野神社は桜づくし。(考えてみれば日本最古のキャラクターグッズは神社のお札やお守りなのではないだろうか?)

 プリントによる安物陶器ではあるが、リーズナブルな値段と華やかさがうれしくなってついつい湯飲みも買ってしまった。とはいえ、マジナイ系のものでさえどう考えても御利益なんてありそうもないビニールやプラスチックで味気ないものが多いなか、こうした実用的で記念品的なグッズの方が罪がなくて良いのではないだろうか?


▼平野神社付近の地図はこちらから▼