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まちやさがし 〜やなぎのばんばどうり そのに〜

 次にご紹介する『鈴木松風堂』も実に興味深い。ちょっと写真では陽射しが強すぎて白く飛び気味だが、のれんにはユーモラスなカエルのイラストが鳥獣戯画さながらに踊っている絵が描かれている。
 それに惹かれて近づいてみると、手描きのポスターからショウカードからみなこのカエルのイラストが使われている。しかも入口の左手には同じイラストレーターの手になるものと見られる瀬戸物?の人形まで。

 見上げるととても立てそうにもない高さに見える2階(実は今で言うロフト的な構造)には虫籠窓が。この店も町屋をベースにしていることが判る。
 ひんやりとした店内はモダンなディスプレイがなされていた。クラフト系のおみやげを売る店かと思っていたらそれだけではなく、炭を応用したユニーク商品ラインナップが主なようである。見ると例のカエルキャラが至る所についている。どうやらこの店のオリジナルキャラらしい。

 「見させてもらいます〜」と興味深げに眺めているとご主人が来られて相手をしてくださった。
 そうなると野次馬ペンギンな筆者の思うつぼでなんでもかんでも訊き倒しはじめる。

 カエルのキャラはやはりお店のオリジナルで、とある作家さんに描いて貰っているものだそうだ。写真にはないが壁にも天井にもカエルのタペストリーがかかっている。残念ながら長く使っているので売り物にはしていないそうだが、いずれも作者の一点もの。紙粘土でこしらえたらしい置物もある。未確認だがきっとこの人の作品展なども京都のどっかでお目にかかれるのではないだろうか。


 お店のメイン商品は炭。といっても紙を原料にした炭が主で、いわば不要紙のリサイクルである。
 炭の材料となる紙はいろいろだが、紙管(しかん)といってボール紙でつくられた頑丈な紙の管や、ご当地京都の人間なら誰もが知っている京阪電車や京都市交通局の使用済み切符、さらにオムロンで使われているという8mmフィルムのような紙の長大なテープに駆動用の穴を開けたために出た1mm角の紙くずなど。
 これを紙管を利用した可愛い入れ物に入れて消臭剤として売っているのである。また筆者の見るところ、この1mm角の炭などは山野草の植え込み材料としても最高。(竹炭や備長炭を入れた花瓶に生けた花が長持ちする効果は有名)いっそ花の種とセットにして二次的な商品にもできますね、という話をしたが「ははは」で済んでしまったが。
 商品のしっかりしたコンセプトからただ者ではないなと思っていると、やはりこれまでも雑誌社や関西のテレビ局からたびたび取材が来たそうである。この店自体は新しいが、会社としては100年の老舗だそうだ。

 ユニークな人気商品としてタマゴの殻の裏側に付いている薄皮があるが、あれを集めてペーパー状に加工した“美肌紙(別名たまご紙)”も扱っておられる。写真上。
 なんでもコラーゲンのかたまりだとかで、これを素肌にそっとあててマッサージをしているだけで直接コラーゲンを与えるのでツルツルな肌になるのだそうだ。

 野郎には関係ないと思うが、女性にはリピーターも多くネットで通販もされている。くだんのカエル君達にも逢えるのでサイトを訪れてみて欲しいが、できたら直接お店でご主人の話を伺いながらたのしく、かしこく買い物をする方がおすすめである。

 この写真の手前に写っているのはなんとダンボールと紙管を応用した組立式(分解すればペチャンコに近くなり、搬送性に優れたものになる)ベッドの見本であり、今会社としてはこれを大々的に売り出しているのだそうだ。
 あまりにも調子に乗って根ほり葉ほりくっちゃべっていたからであろう。筆者の帰りがけにご主人は一冊の小冊子をくださった。一編のイラストエッセーのようだったが、実はそれが会社案内であると知って企業としての頭の柔らかさに脱帽の思いだった。
 これぞ発想の転換、これぞベンチャーと言うものだ。さすが京都、身の回りに昔からあるものがある日とつぜん未来的なグッズに化ける。

■鈴木松風堂ホームページ
 → http://www.kyo-rojishop.com/


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