前栽は京都ならではの奥に長〜い町屋づくりにおいて通風と採光を目的としてしつらえられた中庭で、美観をも提供しているすばらしい建築手法である。
ここはもともと直射日光が射さないように設計され木々が植えられていることで夏でも必然的に日陰の涼しさを持っている。暑さが尋常ではない夏の京都で、日照りの玄関前の道に水を打ち、玄関や部屋の戸を開け放ってやると気温差から気流が発生し、家の奥から玄関へ向かってのそよ風が起こるという仕掛けなのだ。(じつはこれが1/fゆらぎの理論に適った“いやし”の天然冷房になっている。しかも家の奥で香を焚いてやれば自然と家中が薫るというわけだ。天才的!)
しかしそのために前栽では日光を好む植物は育たない。必然的に前栽には苔やシダ、蘭などシブ好みのものが植えられることになる。それを知る筆者なのでクレマチスの花が前栽に咲かさておられる心くばりにご主人の苦心と粋を感じたのである。「でも表に出していたら出していたで花をお持ちになる方もおられて…」と苦笑しておられた。
“殺風景”といえば味気のない寂しい風景を指す漢字語として使われる。しかしもともとは野に咲く花を歩行の邪魔だと踏み荒らし、美しい声で啼く鶏をウルサイといって殺して食らう野蛮な男の仕業を指して言った中国の故事が語源である。ゴミや吸い殻のポイ捨てもそうだが、いつの時代も美しい風景を殺すような無粋で無教養な輩はつきない。
やはり野におけ蓮華草、という句がある。意味は多少違うのだが、他人サマの庭にある花をむしったところで得るものなどない。もうすこし粋と恥を知るカッコイイオトナになって欲しい…おっと、このページは小文句のページではなかった。
*2005年9月、ありがたいことに『万足屋きむら』さんからこのコンテンツをご覧になったと直接ご連絡をいただいた。豊富に取り扱っておられる商品やお店の略歴など、詳しいお店の情報はそのサイトで確認できる。
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