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まちやさがし 〜たこやくしどうり〜
 “町屋探し・柳馬場通その壱”に書いたように“馬揃え”があったという柳馬場だから当時は広い場所があったのだろうが、いまはフツーの“京の通り”である。つまり一般の家あり、商店あり、いわくありげな町屋あり。
 そう、今回のテーマは町屋さがしだった───と思って北へ南へ東へ西へと歩いていると、いつのまにか柳馬場通から蛸薬師通へそれていた。
 ちなみに蛸薬師通の由来は通りの東端に蛸薬師という寺があるからである。

 そこで最初に目にとまったのがこのお店
『万足屋きむら』。

 ▲いかにも町屋のつくりである。さりげに出された看板には“染めものと工芸品”とあったのでのれんをくぐる勇気が出たが、これがなかったら紺地ののれんがかもし出す雰囲気は高級呉服の店といったたたずまいである。
 (それもそのはず、実は京友禅の老舗が出しておられる小物店だったのだ。この文を書くために調べていて発見したこと
http://www4.ocn.ne.jp/~mdoke/hitotoki.html#manzokuya

 店内には金襴(きんらん)や繻子(しゅす)などを使ったさまざまな袋小物が実に上品に陳列してある。窓ぎわの違い棚には銘入りだが手頃な値段の清水焼の小皿もある。▼

 だが花好きの筆者の目を最もひいたのは、色とりどりの小物たちよりも町屋づくりならではの名物である“前栽(せんざい)”に植えられたまっ白なクレマチスの花と鮮やかなコントラストを成す青葉たちだった。
 綺麗にしてはりますねえ、と思わず感嘆を洩らすと女将さんらしきお店の方が「狭いだけどすから…せめてお花くらいと植木鉢で置いてるんどっけど、お陽さんがあんまり入らしまへんので表でお陽さんに当てて咲かしてから置くんどすけど。」とにこやかに話して下さった。

  

 小物の方は定番の匂い袋などの他にも、さすが京都というか携帯電話 ケース(写真手前)もあった。我々野郎では用無しかも知れないが、和装にこだわらずに使えそうだしちょっとした贈り物にもなかなか洒落ていると思うがどうか。
 座敷の左手には床の間があり、子供の節句を祝うこじゃれた掛け軸もかかっていた。あとで判ったがそれも商品だった。
http://www.joho-kyoto.or.jp/~yuhin/2001/tapestry/233.html

 前栽は京都ならではの奥に長〜い町屋づくりにおいて通風と採光を目的としてしつらえられた中庭で、美観をも提供しているすばらしい建築手法である。
 ここはもともと直射日光が射さないように設計され木々が植えられていることで夏でも必然的に日陰の涼しさを持っている。暑さが尋常ではない夏の京都で、日照りの玄関前の道に水を打ち、玄関や部屋の戸を開け放ってやると気温差から気流が発生し、家の奥から玄関へ向かってのそよ風が起こるという仕掛けなのだ。(じつはこれが1/fゆらぎの理論に適った“いやし”の天然冷房になっている。しかも家の奥で香を焚いてやれば自然と家中が薫るというわけだ。天才的!)

 しかしそのために前栽では日光を好む植物は育たない。必然的に前栽には苔やシダ、蘭などシブ好みのものが植えられることになる。それを知る筆者なのでクレマチスの花が前栽に咲かさておられる心くばりにご主人の苦心と粋を感じたのである。「でも表に出していたら出していたで花をお持ちになる方もおられて…」と苦笑しておられた。

 “殺風景”といえば味気のない寂しい風景を指す漢字語として使われる。しかしもともとは野に咲く花を歩行の邪魔だと踏み荒らし、美しい声で啼く鶏をウルサイといって殺して食らう野蛮な男の仕業を指して言った中国の故事が語源である。ゴミや吸い殻のポイ捨てもそうだが、いつの時代も美しい風景を殺すような無粋で無教養な輩はつきない。

 やはり野におけ蓮華草、という句がある。意味は多少違うのだが、他人サマの庭にある花をむしったところで得るものなどない。もうすこし粋と恥を知るカッコイイオトナになって欲しい…おっと、このページは小文句のページではなかった。

*2005年9月、ありがたいことに『万足屋きむら』さんからこのコンテンツをご覧になったと直接ご連絡をいただいた。豊富に取り扱っておられる商品やお店の略歴など、詳しいお店の情報はそのサイトで確認できる。

◆『万足屋きむら』ホームページ◆はこちら


←こちらはまた別な店。
 ひとつあたり幅10cm程度の様々な布を使った匂い袋をアレンジした一種のオブジェだが、これだけ並ぶとちょっとしたショウウインドウにもこんなワンダーランドが。  
 これだから京都のウインドウショッピングはやめられない。

 実はもう一軒、町屋ベースでいわゆる骨董などを置いている素敵な店を発見した。若いのにすばらしい知識と見識を持つスタッフのお兄さんにいろいろ話を伺ったのでホントはすごく紹介したいのだが、店先に撮影禁止とあったのでとりあえず今回は見送りである。次回訪れた時撮影と掲載の許可がもらえれば、ぜひここに紹介したいと思う。

 最後に町屋探しにたいへん役だってくれたページをご紹介しておく。

■京都町屋空間………MACではマウスボタンの関係上多少操作に難があるがなんと3Dで町屋のバーチャル体験ができる。
http://ku-kan.machiya.ne.jp/index.html

■京町屋………町屋の再生と持続を目的として活動されている方々のサイト。町屋で暮らしたい人には不動産情報もある
http://www.kyomachiya.net/index.html

 ※文中敬称略


▼蛸薬師通付近の地図はこちらから▼