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 毎年花の季節、紅葉の季節が近づくと、最近発行されてまだ本の体裁を保ったままの“歩く地図の本”を広げて、さて今年はどこへ行こうか…せっかくだからやはり行ったことのない場所がいいと思いながら、真新しいながらも使い慣れた体裁の地図をたどる。
 ここはもう行ったし、あそこも行った…と考えてゆくと、まるでもう行ったことがない場所など無いような気になってきて、けっこう途方に暮れることが多い。
 まあ何度訪れても大好きな京都のこと、結局はお馴染みでお気に入りの場所へととりあえず足を向けるのだが、やはり基本的に飽き性なのと、せっかくの休日、せっかくの京都だからとまだ行ったことのない場所を諦めきれない。
 そこでふっといつものコースとは異なる道をたどってみる。
 幸い“歩く地図の本”はその名の通り、一般的なガイドブックでは絶対に掲載されていないような小さな目印や路地までもしっかりと描かれているので、筆者のような超銀河的方向オンチでもちゃんと目的地にたどりつける。コツは東西南北を見失わないことだ。(だから小さなコンパスを絶対に持参している)京都はほとんど格子状構造なので、方角を間違うとどんどん間違った方向へいってしまうからだ。
 いつもと違う道を一本ずらしてみると驚くほど視界が異なって見える。京都という街は、一般的な住宅でさえもさりげなく京都を演出しているので、路地裏だろうがまったく普通の住宅地だろうがそれなりに発見がある。そういう意味では新しい発見に出逢えるのでむしろ少しは道に迷う方が楽しいと言える。
 本当に迷ったら親切に教えてくださるので誰にでも尋ねればいいのである。

 今回紹介する桜の名所は、実はそうしていつもの道をずらした結果偶然に見つけたものである。
 場所は賀茂川と高野川が合流する出町柳を下、左を京都植物園、右を修学院として逆三角形を造っているそのど真ん中にあった。
 ゆるやかなカーブを描いて静かに流れるその川は、そこを流れている時点ではなんという名前かが不明なのだが、流れを遡ってたどると東の修学院あたりでは『音羽川』であり、さらに遡るとあの哲学の道に挟まれて流れる『琵琶湖疎水』になるのである。
 実際に橋の欄干には“疎水分線”とある。
 それはともかく、1km弱のこの桜並木は本当にジモティしか知らないのではないだろうか。事実、この写真を撮った時も多少は見物のための違法駐車がいたが、まったくの住宅地にある並木道、しかも土手のある川と言うよりはほとんど堀なので、さすがに座り込みはもちろん宴会など開くわけにも行かず、幼い子どもを連れた親子連れかお年寄りが散歩している程度であった。
 だからここは筆者が好む“歩き花見”にはもってこいである。

 おすすめの桜三昧な楽しみ方としては、出町柳から桜をたどって北大路まで来て、そこからこの住宅地の中に隠されたような“秘密の花園”をぶらぶらと堪能しながらまた途中から引き返し、今度は植物園を通り抜けて北山通で食事など(もちろん弁当持参で植物園で食べるのも手)を楽しむのはいかがだろうか。
 筆者は未体験だが、有名な学校がひしめいている地域でもあるので学生客を見込んだオシャレな店やリーズナブルな店も多いはずである。
 残念ながら“賀茂川の桜”でも紹介しているように、北大路より上の“半木(なからぎ)の道”に居並ぶしだれ桜は、植物園やここ洛北橋に咲く桜とは半月ほど開花のタイミングがずれているので、こちらが満開&散りまくりの頃ならしだれ桜も五分〜七分ほど咲いていると思われるが、転向の関係もあってなかなかそうは問屋が卸さないのが実情である。
 ともあれ、静かな春、静かな桜を静かにそぞろ歩いて楽しみたい方にはぜひおすすめしたい“秘密の花園”である。

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