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 毎年8月16日には“大文字の送り火”を灯し、必ず全国に報じられることでその年のお盆の終わりを告げる如意ヶ岳(にょいがたけ)、通称・大文字山。

 全部で五つある送り火は、高い建物が増えたために年々見える場所が減っているとはいえ、それでも洛内を闊歩していると意外な場所や建物のスキマから見え隠れすることもあり、そういうときは妙に嬉しくなってテンションが上がる。

 とはいえ、五山の中でも、メインとなる大文字は他に比べると多少は高い位置にあるので気をつけていれば割とみつかりやすいのだそうだ。

 この山が特別な許可も要らずに登山でき、しかも近隣の市民のちょっとしたハイキングコースになっていることをご存知だろうか。


 筆者は何度となく送り火も観、京都を訪れるたびに見上げてきたお馴染みの山だが、役員というか送り火にたずさわる人以外は登れないのだろうと思っていた。

 だが目の良い母は昔から平日昼間の大文字に人影が動くのを気づいていて、よくそのことを筆者に告げていたので、調べてみると意外に簡単なルートだった。

 観光客でごったがえす銀閣寺参道を行くと門前から左へ折れる道がある。
 途端に人がいなくなり、不安になるがじきに立て看板や石碑が見つかる。あとは徐々に山道へと入って行くのだが、登山と言うほどではないにせよ一応は山道なのでそれなりに歩きやすい靴でのぞまれたい。

 やがてちゃんとお祀をした湧き水が見つかる。
 ここから急に道がせばまり、わりと急角度の石段を含んだ登山道へと変わってゆく。


 ………時間にしてみるとわずか30〜40分なのだが、周りの風景もあまり変わらずに単調なためにだんだん「まだか、まだか」という気になってくる。
 すると突然のように景色が開けて、自分が火床へたどり着いたことに気づくのだ。

 山そのものは標高400メートル足らず、大文字のある高さも300メートル程度ながら、京都を囲む山々のうち最もなじみのある“東山三十六峰”のほぼ中央に位置し、まさにその眺めは180度のパノラマである。
 晴れ渡った日には遙か淡路島も見えると言う。
 筆者が登った日はあいにく曇天だったのだが、それでも双眼鏡ではるか大阪・梅田にそびえる特徴的なビルのいくつかを確認できたが、かんじんの洛中の風景に関しては、地図がないと案外どこがどこか判らないものだと思った。

 足元にあるでかいブロック状のものが“火床(ひどこ)”。
 登ってきて樹々がパッと開けたところがちょうど“大の字”の横棒の左端位置であり、目線を移動させると同じものがずっと向こうの方まで点々としつらえてある。
 ここに井桁状にたかだかと薪を積み上げて火を点けることであの景色となるわけだと思うとなかなか感慨深いものがある。写真に写っているのはまさに“大の字”のどまんなかで、土台もでかい。

 ひととおり景色を堪能して下山。

 下に掲げた写真は“大の字”の右払い。これをたどって山を降りたのだが、とにかく下へ下へと行けばいつか哲学の道にたどりつくので道に迷うことはないものの、登りと異なりこちらは石段もなく、雨上がりだったためにスニーカー程度では結構滑って歩きにくかったので、このルートで降りられる方はそれなりにお覚悟を。

 逆に山頂への道もあるが、山頂は単なる“山のてっぺん”というだけで樹々も生い茂って、景色もほとんど見えないそうなので筆者も行かなかった。

 なお、山の管理などをされていて毎日登るのが日課だとおっしゃるおやっさんがおられた。
 話を伺うと、夜明けを観るために懐中電灯だけで真夜中から登ってくる人も多いという。しかし途中灯りもなければ樹が茂っていて月明かりも射さない場所も多そうなので、案内がいるか慣れていないと危険である。

 また、もともと聖地なので当然トイレもなければ自販機もない。ポイ捨てはもちろん、急な尿意などに襲われたからといって、神様の山を汚せば末代までバチが当たるので登山の際は充分用心して行かれるべし。

 ただし記憶だけでおぼろげだが、五山ある送り火の灯される山は
個人所有の山もあり、みな自由に登れるように開放されているわけではないはずなのでご注意を。


■大文字・五山送り火について詳しい京都新聞のサイトはこちらから。

▼大文字山登山道付近の地図はこちらから▼