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きやまちごじょうあがる
 きやまち。幼い頃からその名は祖母から聞いていたが、聞いたときが幼かったのと初めて実際の木屋町を観たときも子供だったために皆目縁がなかった。
 それもそのはず、木屋町といえば洛中、三条あたりの繁華街で昔から知られる“飲屋街”だったからだ。

 いまでこそ先斗町(ぽんとちょう)や祇園は若い人たちや旅行者でも気軽に飲んだり食べたりできる一般的な店が多くなったが、筆者が法的飲酒年齢に達した頃はまだまだいずれも“一見(いちげん)さん”お断り、という店がほとんどだった。

 つまり一種の会員制だったわけだが、イマドキの会員制と違って金なり地位があれば会員になれたというものではなく、かならずその店で信用されるお得意さんの紹介がないと敷居をまたぐことさえ叶わなかった。
 逆に言うと、たしかな紹介さえあれば小僧だろうが構わないわけだが、それだけ本当の意味での高いステータスが必要だし、なにか事が起これば連れて行った者にも責任が及んで出入り禁止になるので、誰かに紹介されるということは社会的に信用された一人前の人間であるという、いわば名誉と信用の証なのだった。
 その点、木屋町はそこまで厳格ではない、いわゆる一般的な飲み屋さんが居並ぶ通りなのである。
 この木屋町通、地図をご覧になると判るが、川端通と鴨川を挟んだ西側を北は二条通から始まって、高瀬川を伴って五条まで続く。

 地図で辿ると川に沿って七条まであるようだが、そのあたりまでくると道が京都らしくない“わやくちゃ”な状態になるのでとりあえずは五条までが“らしい”と思う。

 逆に北詰の御池通や三條あたりには、かの池田屋跡や武市半平太の寓居跡など幕末の史跡が多い。………といっても、今では人知れずの石碑がぽつんとあるだけだが。

 さて、飲み屋が目当てならば木屋町は三条から下ルのがパターンだが、あいにく今回の目当ては夜桜ではないので今回は五条から上ル…すなわち北上することにする。

 スタートは五條大橋。

 05年にNHK大河でふたたび脚光を浴びた『義経』がまだ牛若丸と名乗っていた頃のエピソードでおなじみ「♪きょーうの五條のはしのうえ」のあの五条大橋である。
 ごらんのように五條大橋には、御所人形風でやたら丸々と可愛い弁慶と牛若丸の像があるが、意外に小さいのと、クルマが行き交う大通りの真ん中にあるので意識して探さないと判らないのが難儀だが。

 閑話休題。

 五條大橋西詰め北側のたもとには、京都を代表する工芸品の扇を模した塚がある。
 ここからずっと北の四條大橋までの約1kmの散策路がずっと桜並木だ。
 三條から四條まではもう完全な飲屋街だし定間隔でぼんぼりがあるのがいかにも木屋町らしい雰囲気を醸し出しているが、ここ五條〜四條間はおなじ木屋町通でも一般住宅が多くて閑静な住宅地の様子で昼間は土日でも驚くほど人通が少ない。
 だから、ほんとうにの〜〜んびりと桜を楽しみながら散策できる。
 ひと組だけ高瀬川に架かる小さな橋の上でピクニック程度の規模で花見をしているおばちゃんズを見かけたが、いたってしずしずと桜を楽しむ上品な人たちだった。

 写真は昨年2005年4月9日の撮影だが、今年はもう少しピークは早いかも知れない。
 この桜たちが散ると、つぎは青々とした柳が芽吹き、いよいよ木屋町らしい風情に変わってゆく。


▼木屋町五条上ル付近の地図はこちらから▼