ミスが許されない、失敗を取り返すことができない上に、作業は果てしもない。
こんな過酷な作業を行う人、行える人はもう今おられる、年齢を重ねられたお年寄りの技術者数人のみだという。
そしてあまりにも過酷な作業なため、後継者もいない。なによりもこれ程の技術でありながら、これだけ作っていても生活できないのである。
いやらしい話になるが、家のローンや家賃を払いながら四人家族がなんとか普通の生活ができる月収を30万として、年収360万、だが一着の総絞りの着物を仕上げるのにひとりのベテラン技術者が2年要するとすると、その一着は単純計算で720万円の価格がないとどうしようもないのだ。
つまり。現状では今がんばっておられる方々が作っているものが、世界で、この歴史で最後の作品となる運命である。
一度失われた伝統の技術は二度と戻る事はない。
伝統工芸士という肩書きがあっても、政府が決めた単なる資格に過ぎず、人間国宝指定のような援助金(といっても生活の足しにもならないそうだが)ですらもなく、むしろ資格を取得するためにおそろしくお金と時間と手間が掛かるのだそうだ。
哀しいかな、我が国は世界でも希有なハイレベルな技術者を抱えながら、国がそれを政治的にも金銭的にも援助奨励したのは安土桃山時代までなのである。
あとはひとりでも多く、この驚愕の技術の鬼気迫る凄みを知って戴いて、少しでも命脈を保ってゆけるよう祈り協力して貰うしか道は残っていないのである。
絞り染めの体験もできるが、筆者は案内をしてくださった方に「あの技術紹介のビデオこそ、サイトでガンガン動画配信されては如何ですか」とそそのかした。
あのビデオ、特に絞りの工程は誰もが目を見張る。見張らずにはいられない凄みがある。
ましていま動画サイトは一番の旬であり、多くの人が毎日「何か面白い動画はないか」と虎視眈々なのである。
アレを見たら日本人はもちろん、世界中の日本ファンが絞り染めを放っておかない。そして日本は不景気でも、世界にはカネの使い道に困っている人間も多数いると思う。
このコンテンツをご覧になった方はぜひ『京都絞り工芸館』のサイトから要望を提出して欲しいし、京都を訪れた方、まして芸術系に少しでも足を突っ込んでおられる方はぜひ一度は訪れてあちこちに紹介して頂きたい。
筆者も日本人としてなにかせずにはいられない。哀しいかな、資金援助ができないのだが。
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