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やすいこんぴらぐう
 筆者は十年前から東大路通は東山安井にある『あもや花折』という、京風餅菓子と鯖寿司を売る店の大ファンで、この店が目当てで八坂神社近辺に居たならもちろんのこと、洛中へ出向いたならば四條河原町どころか四条烏丸からでも延々てくてくと歩いてゆく。

 平地とはいえ、バス停でいえば6つ以上、距離なら2km弱はあるだろう。もちろん、本来の目的を果たした後で、である。
 このことは当コンテンツの『あもや花折』ページに詳しいので参考にされたいが、この店がある東山安井に、隠れたというか、少々風変わりな神社がある。

 それがこの『安井金比羅宮』なのだが、この金比羅宮、細長い立地に加えて沿道や裏口のまわりにいわゆるラブホが数件あるために昼間でも異質な雰囲気に見えてしまうので、京都に慣れた観光客でも鳥居越しに「ちら」と覗いたできびすをかえしてしまうのだ。
 左の写真では、画面の右側にちら、と見えているコンクリート壁がまさにそれだ。本来、神社ならではの堂々とした雰囲気をぶちこわすがごとく鳥居の片足を隠してしまっている事も奇妙な印象を与えている。

 事実、筆者より先にどことなく神社仏閣マニアに見える二人連れの女性観光客がしばらく鳥居越しに中をうかがっていたが、相談の後に結局そそくさとどっかへ行ってしまった。


 その時は花も何もない時期で、しかも夕闇迫る時間帯で案の定誰もいなかったが、ライトアップイベントでもない限り京都では16時をまわるとウソのように観光客が消えるため予想はしていた。
 しかし小さな境内に予想もしなかった奇妙なものを見つけて気味が悪くなり、さすがに早々に引き返したのである。

 それから数年後、円山公園の桜を愛でつつ頬張ってやろうと桜餅目当てで五條から『あもや花折』に向かっていたときに再びこの前を通りかかり、以前と違う鳥居の奥の意外な華やかさに気づいた。
 華やかさの犯人は、小さな境内いっぱいの桜だった。
 前回と異なり、外国人を含めて幾人かの観光客もいた。

 筆者は知らなかったが、あとでネットで調べてみると“縁切りに霊験あらたか”だとクチコミで知られた所だったらしい。

 “縁切りに霊験あらたか”と書いたが掲げられた高札によると、ほんとうは“縁切り”というダークパワーだけでなく同時に“新たな縁を結ぶ”という前向きな願掛けと対をなしている。
 ただ、この願掛けのためのアイテムがものすごい。下の写真をご覧いただくと一目瞭然だが、まるでうずくまった巨大な妖怪のようなもの、これがこの神社を有名にした『縁切り縁結び碑(いし)』だ。


 実は筆者が初めて安井金比羅宮を訪れたとき、ひとけのない境内でぼんやりと点った白熱電球の街灯に薄白く浮かび上がるコレを観たのである。さすがにギョッとしたし、かたわらに説明のための高札が掲げてあったものの暗いのと近寄るのがイヤで読めもせず、薄気味悪くて早々に立ち去ったのである。

 だが桜の季節に訪れてみると、たしかに異様ではあるが桜が咲き誇るおだやかな春の日射しの下でうずくまる碑は………

 やはりブキミである。

 さてこの碑、中央にはオトナがなんとかくぐり抜けられる大きさの穴がうがたれていて、真っ白な襤褸(ぼろ)でもまとっているように見えるのは、みんな貼り付けられた願掛けのお札である。
 聞けばゴシップ好きにはたまらないような様々な内容が満載されているそうだが、人の辛い願掛けをのぞき見するとコチラに悪縁がつくらしいので、筆者としては他人のプライバシーは詮索しないようにすることをオススメする。

 この碑に悪縁切りの願を掛けて表から裏へ通り抜け、次に良縁を願って裏から表へと抜けるのだそうだ。
 ちなみにこの外人さんはウラからオモテへの片側通行だったが、彼の願が叶ったかどうかは知るよしもない。

 桜の季節にはもちろんだが、境内自由なので季節はずれには肝試しをオススメしたい。
 ただし、ビビリのアイテムとして遠巻きに見て怖がるのはともかく、あくまでも相手は神様なので絶対にオモシロ半分に碑の穴をくぐってはならないことを書き加えておく。


▼安井金比羅宮付近の地図はこちらから▼