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途中で交わる祇園、河原町、烏丸通などの主立った南北の通りも、四條通と交わるあたりがもっとも賑やかだ。まさに、洛中の目抜き通りの中でもっとも華やかな道であるといえよう。
しかし正直な話で、筆者は四條通りの西の果てが“松尾さん”だとは思ってもみなかった。
───というのも、筆者が愛用している『歩く地図の本』は、必要とあらば街角の小さな看板さえも目印として掲載してあるような、いわば窮極の局地攻略用地図帳ではあるが、文字通りA4変形サイズの本であるために、京都の街の端から端を追っかけるようとすればページからページへとゲームブック的なワープを必要とするのが弱点だ。
しかも観光的にメジャーでない寺社が多いエリアでは意外と部分拡大図がすっぽ抜けていて、今回のように長距離に渡った道を一望で把握しようと思えば、本の前の方にある“京都盆地一望”式の描画エリア区分の説明用マップを見るしかない。
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しかし当然、縮尺率の高い地図だから大雑把で、こんなプランを思いつかない限り、無理にパソコンによる繁忙性ピントフリーズ(老眼とも言う)の目を細めてまで道の行く末を辿ってみようと見ようとは思わなかったのである。
筆者における京都散策のオキマリとしては、東山なら京阪、西山なら阪急と言った捉え方で市内へ入り、あとは点在する目的地を歩きをメインに辿ることが多い。
バスも使わないでもないが、正直歩くよりしんどいので乗るなら鉄道を使う。
大阪への帰り電車の混雑を避けるため、京阪を使うべく基本的にルートを東山へとる。したがって嵐山方面へ出掛けたらあとは大体、京福電車で四条大宮とか北野白梅町へ行ってしまうことになる。
だから余計に松尾大社の前の道がどこの通りか、なんて考えもしなかったのだ。筆者がクルマを運転するならコンナコトはなかったかも知れない。
そんなわけで今回のスタートは阪急嵐山線・松尾駅からである。
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阪急は世界一美しいデザインの電車である。最近の新型は妙な懲り方をしてしまっているが、この頃の型式のものは無駄のないシンプルな美しさに満ちている。
この松尾駅に限らず、阪急嵐山線の駅はどれも良い意味で田舎のひなびた雰囲気の素敵な駅である。これは阪急全線に言えるのだが、古かろうと最新式だろうと、駅の空気感そのものが実に品が良いのである。
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出掛けたのは11月1日。だから松尾大社では七五三まいりの親子連れがチラホラ。
社の由来などは他の純粋な京都サイトにお任せするとして、この日見かけたネタを披露することにしよう。
筆者は昔からここの茶店の鰊そばを食べるのが楽しみだったが、この日はさすがに七五三参りの人で満員だったので諦めた。アルバイトなのか、それなりの服装に身を固めた若い女性が給仕に忙しく走り回っていた。
こういうことは珍しい。なぜなら筆者は自分たち以外に誰も人がいないような時期しか訪れたことがないからだ。
そういう時でも茶店は開いている。覗くと、たいてい“昔の娘さん”がペアで静かに四方山話でもしながら店番をされている光景に出くわす。訊ねたことはないが、オフシーズンでは、いわゆるお店の人というよりは、社の氏子とか婦人会の方々が運営されているように思う。まして『樽うらない』なんていつの間にできたのか、こういうイベント時にだけしつらえるとみえて、看板も綺麗なものだ。
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松尾さんと言えばやはり酒の神様。したがって筆者の信仰対象とも言えるので、敬意を払いつつ、一路東へと向かうことにする。この踏切がいうなれば四條通り西の端の出発点。
すぐ先には桂川を渡る橋があり、しばらく行くとさっそく脇道に朱色もまばゆいばかりの鳥居を見つける。
『梅宮神社』といい、日本最古の酒造の神さまらしいし、リニューアルしたての鳥居や広い敷地を見るとかなり由緒正しい社のようだが、見どころ的には梅の季節が旬のようで、シーズン時には北野天満宮のように拝観料を取って神苑を見せてくれるらしい。
収入源が確立しているとあって、どうりで立派である。猫まで恐い顔でしっかり賽銭を要求していた。
神苑は季節ごとにさまざまに花が見られるという情報もありそれなりに見応えがあるらしいが、しかし拝観料を取る時点で節約主義京都観光の『ぶら旅』的にはNG傾向であるのでこれにて次へ向かう。
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