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 『とにかく桜をずっと観ていたい。』毎年、花の季節の京都へ行こうと思い立つ度に、目指す目的がそれだ。
 可能な限り、桜の咲いている光景を目に入れていたい。

 京都へ二時間ほどで行ける大阪に住んでいるのだから何を大げさな、泊まりがけデフォルトな他地方の京都ファンに比べれば恵まれているとお思いだろうが、筆者の場合は余暇と予算がかなり限られているので、桜は一度、紅葉は二度出逢いに行ければ御の字である。

 だから大げさでなく、毎年ただ一度の“出逢い”に全てを賭ける。

 まして移動式花見を信条とする筆者の場合、植えられている桜の必要本数はかなり重要である。いくら100本200本と並木として植えられていても、歩いていけば数分もかからない。アッという間に見尽くしてしまう。
 とにかくコース上に途切れることなく桜がないといけない。
 以前から何度も書いていると思うが、洛中の桜はおもに疏水に沿って植えられたものがもっとも華やかで本数も多いと考えている。そこで考えたのが昨年のこのルート。

 以前に書いたコースとも被る場合も多いので、その都度別窓で関連記事をご覧いただけるように、リンクを示す。また、できるだけレイアウトに凝ることなく、筆者が歩いたままに写真を提示して行くブログ風のスタイルにした。
 ご自身で歩かれるときの参考と言うよりも、単純にバーチャル散歩を楽しんで戴くのもよろしいかも知れない。

 と、いうことでスタートは京阪電車、祇園四条駅から。

 駅を出て左手に鴨川を観つつ川端通りを少し“上ル”と、すぐに白川に出くわす。
 もっともこのあたりは人が多い。白川に沿って右手に小洒落たレストランの裏手を見つつ100mほどゆけば『巽橋(たつみばし)』と辰巳大明神があるからだ。名前を聞いてピンと来なくても、民放が京都系バラエティ番組を放送するときには清水寺と並んでカバーページ代わりに必ずと言っていいほど登場する風景なので一目瞭然である。

 左手に辰巳大明神。そこから南側に顔を向けると、白川に小さな石の橋が掛かり、瀟洒な小料理屋を左右にして人がやっと行き交える程度の狭い路地に続く。


 20年ほど昔は、ここでどれだけボケッと時を過ごしていても、地元の人くらいしか通らない静かで落ち着いた場所だったが、今では普通に通ることさえ叶わない。

 代わる代わる記念写真を撮るために観光客が列を成している光景に変わってしまった。信じられない事に、この状態が午前中から夜遅くまで続く。もぉ“わやくちゃ”である。

 当時ここにあった、この世のものとは思えないほどに繊細な味わいの京うどんを食べさせてくれる上品なお店はそれを避けるように移転してしまった。


 ここの風情は二度と昔には戻らないが、それでも救いはある。
 日本人の特性なのかも知れないが、たいていの人はマスコミから与えられた情報に対して額面通りに受け取り、認証ありきでそれ以上には延長作業はしない。
 だから巽橋を離れるとウソのように人がいなくなる。

 白川は広めの新橋をくぐると、ヒトサマの家と家の間へ一旦姿を隠す。もう一度会うのは白川北通り、別名『なすありの径(みち)』にさしかかってからだ。
 盆栽では、昔から川や道を表現したりする場合に『白川砂』という砂を使うのだが、もともとはこの白川の川砂が用いられていたのだそうだ。
 今も綺麗には違いないが、あいにく東大路にさしかかるまでは用水路っぽいと言うか人工的なそれであって、梅田の阪急三番街名物の人工川とさほど変わらない印象だ。


 東大路を越えると、川幅も拡がり、石で組まれた護岸には桜に代わって柳が列を成し、ところどころにやっと一人が通れる程度の細い石橋が掛かるようになる。
 桜の頃は丁度芽出しの頃なので、風にそよぐ様子はなんとも清々しい。
 ふと、そよ風にいい香りが混じっていると思ったら、『餅寅』さんという和菓子屋が。以前もここで草餅を買い、行儀悪くも歩き食べしたことがあり味を知っていたので今回も購入。
 もちろん桜餅はデフォルトである。

 餅寅から少し行くと三条通りに出る。
 そのまま通りを渡って200mほど白川をたどれば、岡崎の京都美術館前にでるのだが、今回は柳に切り替わったついでに一旦桜から離れ、三条通りを蹴上へと向かう。

 ゆるやかな坂なのだが、最初はそれほどではないのが上るにつれて意外にしんどい。
 かつてまだ京阪電車京津(けいしん)線が路面電車としてここを走っていた頃は、いまや懐かしい“吊り掛け式”モーターをゴウゴウゴロゴロと唸らせながら勢いを付けて必死に上っていったほどの坂である。
 それもそのはず、この坂の先にあるのは蹴上のインクライン。
 未曾有の大工事で琵琶湖から山をぶち抜いて水路を引き、その水の落差をもって日本最初の水力発電所のタービンを廻し、そこで生み出した電気で日本最初の路面電車を走らせたのである。
 当然、そのエネルギーを生み出すだけの所以があるのだ。

 ウェスティン都ホテルの前を道なりにあがってゆくと、やがてふたたび桜並木が見えてくる。
 インクラインの桜である。

 ちなみに、上の写真はちゃんと水平を取って撮影しているのだが、ご覧のように見事にかしいでいる。インクラインの斜度がどれくらいあるかがお分かりだと思う。

 《桜渡り:その二へつづく


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