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 まず、上の写真の説明から。
 一見、陽の当たる白砂の輝く庭先をバックに撮った桜のひと枝…に見えるが、少し違う。背景は浅いながらもせせらぎも清々しい川、白川である。この道に気付いたのも、筆者がつねに挙動不審者のようにキョロキョロするクセがあったからだ。
 実は先に登場した『白川通り』は、たいていの通りはまっすぐ貫かれている洛中では珍しくジグザグに曲がりながら、紅葉に映える三重の塔の写真で知られる『真如堂』の裏門へ通じる坂道に繋がっている。けっこうな急坂なのだが、真如堂に通じる急階段の途中からふと下へ目を転じた時だ。

 今上ってきた坂道と並行するようにして、住宅の屋根が連なる向こうに見事なまでの桜並木の、ただしてっぺんだけが並んでいた。あいにくそこから先は建物が邪魔をして、桜がどこまで続いているかまでは判らない。でも道はどこへ通じているんやろかと、筆者のバイブル『歩く地図の本』で見ると、哲学の道に流れる疏水より太く思える流れが並行してず〜っと銀閣寺まで続いているのである。

 それがこれを撮った前の年、2009年の春。そして2010年、読みは当たった。

 見事な見事な桜並木がえんえんと、しかも静かで落ち着いた清潔な道に人は居ないに等しく、ごくたまに行き交うのも近隣に住んでおられるとおぼしき普段着の人がチラホラだ。
 そしてどの樹も実に立派だ。賀茂川沿いに植わっている桜たちとは幹の太さがちがう。花の付き具合がちがう。精気に満ちあふれているのだ。

 そしてなによりもこの川の水、川底の美しいこと。
 これこそがまさに、盆栽のための砂を採った頃の“白川砂”だろうと確信した。案の定、途中で何度も疏水と交わってはいるが、この川こそが白川だと知った。

 咲いている桜もソメイヨシノとは異なる品種らしく、けっこう変化に富んでいる。
 実はこの景色に見とれているときに、若いべっぴんさん二人に道を尋ねられた。どうやら韓国の人だと判ったのだが、風景に見とれていたのと不意を突かれたためと本当に美人だったために筆者はすっかり頭が真っ白になり、簡単な単語すら皆目出てこず、焦りに焦った挙げ句に身振り手振りで説明できたものの、あとでああいえば良かった、こう応えれば良かったと大変悔やんだ。

 彼女らの行き先は狛犬ならぬ狛ネズミで知られる『大豊神社』だった。
 これも後で考えたら、京都にいる人でもかなりマニアックなはずのそこに、なぜ韓国の女性が行こうとしているのかだけでも話をすれば良かったとこれも後悔のタネになった。

 閑話休題。

 ふりかえりざまに撮った上の写真では、右上の小高い山の上に真如堂がある。
 紅葉で名高いとはいえ、実は数は少ないとはいえ、桜もかなり美しい。真如堂の正門横にある『法伝寺』は筆者オススメのスポットでもあるので、余裕があるならそちらも廻られるとよろしい。ただし、今写っている写真の位置からさかのぼって回り込むには、遠回りの上に結構きつめの道のりなのでそれなりのお覚悟を。

 それにしてもこの新しく見つけた道の桜のなんと見事なことか。
 樹の大きさもさることながら、咲かせている花の数がものすごいのである。その元気のバロメータとなるひとつが、盆栽用語で言うところの『胴吹き』という、枝ではなく幹からいきなり花を咲かせている状態だ。

 人も来ず、桜は独り占め。あまりの心地よさに筆者はこの散歩道で『飲み歩き』を始めた。
 酒は普通の1.8L紙パックものを移し替えただけ、肴はコンビニで買ってきたスルメの裂きイカだが、こんなに贅沢な酒盛りはない。

 ところで川の色がまるで雨降りの後のような色に見えるが、独特な川砂の色の為である。

 とにかく枝の張りも素晴らしいのだが、枝の先の先まで花が付いている。それに、桜というのは枝垂(しだれ)ででもないかぎり、立派な樹は背が高いので案外こんなアングルで花を見ることは少ないのである。
 それというのも、この白川の桜はすべて疏水の対岸からオーバーハングしているためだ。実はこのことが白川の桜が立派な理由でもあるが、それに関してはのちほど触れることにしたい。

 午前中は曇っていたのが午後はすっかり青空になり、桜色がますます映える。
 おもいっきり堪能してはいるが、筆者は更に欲張る。

 やがてこの白川は今出川通で哲学の道を流れてきた疏水と交わるのだが、面白いことに十文字になったのちにそのままさらに北へと通じて(筆者は逆行しているので本来は流れてきて)行き、その先は滋賀県は大津方面へと繋がって行く。
 なので、ここからは白川と別れて哲学の道へ注ぐ疏水を逆行して行く。

 これも銀閣寺道と呼ばれるあたりはご覧のように車や参詣客と観光客でごった返し気味だが、疏水に沿って今出川通から離脱すると、突然閑静な住宅街に入り込む。こんどは道も細いので散歩道といった風情になる。
 が、疏水に沿っている間は桜が途切れることはない。
 これでもか、これでもか、と桜が現れる。そのどれもが素晴らしい。まさに当初の目論見通りだ。

 上の道をさらにたどってゆくとやがて、財団法人日本ナショナルトラスト保護資産『駒井家』に着く。
 そこの詳細は適当にググるかウィキっていただくとして、建物内部は有料なので外回りだけ覗かせて頂いた。いずれ紹介することもあるかも知れないが、今回は桜とは無縁なので、このスポットはスルーする。実はそのあとに素晴らしい桜スポットが待っているのである。

 《桜渡り:その四へつづく


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