だが2010年夏ごろに放送された、サイケデリックな色感覚でありながら、妙に生々しい表現で京都を舞台にした怪しげな青春アニメーション『四畳半神話体系』の第一回を観て筆者は驚愕した。このアパートの中を見たことはなかったが、オープニングのコラージュ画像の原料は間違いなく、ここだと直感した。
もちろん作中では主人公が住まう所になっていた上に、間違いなくエンドロールには協力としてクレジットされていたので、おそらく実写のもとネタも間違いないだろう。
もっとも、協力として記載されていても、はたしてあの室内写真が演出なしのオリジナルかどうかは判らない。
表現が変われば見事に印象が変わるものだが、ある意味このアパートメントの現実離れした雰囲気としてはそれもアリである。事実筆者もぶら旅記事『高野川』の中で“正体不明のアパート”などと大変失礼な紹介の仕方をしている。
そのときはまだ『銀月アパートメント』の手描きとおぼしき看板はかろうじて読めたのだが、今はもう消えかけてしまっている。当時でも「空き家かしら」と思ったのに、こうなると失礼ながらますますそう思えてしまう。
誰か住まっている方でも出入りしてくれればそれとなく何かお話でもして訊ねてみようとしばし構えていたがそれも叶わず。まあ相手さまにしてみれば迷惑なだけの話なので、謎は謎のまま置いておき、こちらで勝手に妄想に耽るのがよろしいであろう。