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ふしみいなりのたのしみかた そのさん
 『神寳神社』に味を占めた筆者はさらに横道に道草のネタを探して地図をつぶさに見てみる。すると、名物の“おもかる石”を見逃してしまったことに気付いたが、気分的に戻るのはシャクだし、おもかる石なら他の人がなんぼでも記事にしてるだろうからと自分に言い聞かせて前へ進むことにする。

 地図にはミリ単位の間隔で鳥居の記号と名前だけが記載されているが、実際に在処を探すといずれも無限鳥居ゲートから横道に逸れた所にぽつりとあるものが多い。


 別ウインドウで開く地図→■■■エンジ色でなぞったルートが今回筆者が辿ったコースだが、あいにく筆者はうっかり三ッ辻までの二股コースでそうしたお社の少ない方を選んでしまったようだ。これは次回にクリアしてみたいと思う。

 それでもひとつひとつ紹介しているとそれだけでなんぼでもコンテンツができてしまうので、カタログ風といっては八百万(やおよろづ)の神様に失礼だが、ざっと端折らせていただくことにする。
 まず前回の『神寳神社』への分岐点からすぐの所にあるのが『天照月日之宮(写真左・中)』。

 

 右も中も『天照月日之宮』だが、同じ名前でふたつのカタチ、ふたつの参道を持っているのも面白い。
 石の鳥居の方は『なやみのある方はお参り下さい』と札が掲げてある。ここに訪れた時、筆者もなにかとモヤモヤした状態だったのだが、石畳を数歩進んでゆくうちに、自分の悩みなどはちゃちすぎて、こんな立派な神様に願をかけるのははばかれて恐れ多いような気がして結局奥までゆけなかった。
 右はご覧のように立派な構えの場所にもかかわらず、名前の額も見つけられない上に地図にもそれらしき記載がなかった。実は地図に描き忘れたことに今気付いたのだが、この階段を上がった所には大きな池がある。

 上の『新池(写真左端)』がそうで『熊鷹社(写真中左)』の背後に控えたかたちになっている。
 『熊鷹社』自体は立派な拝殿作りで、その前には5m超級の巨大な鳥居が立っている(写真中右)のだが、それが面している道は2mもなく、向かいには稲荷山の鳥居を製作している『竹屋』があるため、鳥居は真横からしか見られない。
 ようするに『熊鷹社』は新池に対しての結界ゲートなのだろう、拝殿の向こうに壁はなく、池まで素通しになっているのである。
 そんな構造のためか、お供え目当てでカラスがやって来やすいらしく、さらに火のついたローソクで悪戯すると見えて、拝殿のヨコには「参拝後のロウソクは必ず消して」との立て看板があって驚いた。
 どんな所に災いのタネが転がっているか分らないものである。
 さらに進んでゆくと、ついにというかようやくというか、『お休み処』が出現し始める。
 それにしても『お休み処』の多いこと。沿道に点在するお宮さんよりも多いようだ。
 筆者の乏しい記憶にあったのは、以前訪れた時「どこかのお休み処までは行ってから引き返した」というものだったが、「ああ、あの時ここで引っ返したなあ」と懐かしんだお休み処は、ステージを上がってゆく度に「あれ?こっちやったかいな。ほなさっきのは?」と何度も記憶違いであることを思い知らされた。それほどステージごとにあらわれるプチ宿場町風の雰囲気がよく似ているのである。

 だが、何度目かのがっかりのあとでついに本物に出くわした。結局それが『四ッ辻』と呼ばれるお山めぐりの分岐点だった。
 ひとつは山の尾根線に沿って東福寺方面へ抜けるルート、次に三ノ峰(下之社)、二ノ峰(中之社)、一ノ峰(上之社)を経て清明の滝へ廻るルート、そして山の高所を巡らずに直接清明の滝へ向かうルートと、たった今たどって来た道の四本に分かれている。
 ここからの見晴らしも良く、さすが分岐点にある二軒のお休み処は大きな店で、よく賑わっている。

 さてここから上に上がる人は信仰によるお山巡りかハイカーかモノズキである。あとはかつての筆者がそうであったように“これで充分と満足して引き返す組”だ。
 しかし今回の筆者はモノズキ組なので、どんどんお山の上を目指す。

 面白いのは、登りばかりではなくたまに下っている箇所もあったこと。訪れたのは12月13日だったが、まだ部分的に紅葉も美しく残っていた。
 ───左から『下之社』『中之社』、間にひとつおいて『上之社』。ご覧のように基本配置などでは三つの社はよく似ているが、よく見ると拝殿の屋根の作りや鳥居、灯籠のデザインなどが微妙に変えてある。


 さすがに上之社を越えると下り道ばかりになり、すぐに樹齢を重ねた林の中へと入ってゆく。
 斜めに差し込む光がなんともいえない良い雰囲気を作っているが、さきほどの上之社の真っ青な空を撮影したのと同じ快晴晴天の午前中、それも間もなく昼食時にさしかかっている頃合いなのである。
 まるで深山の人知れぬ古社めぐりでもしているよう。だがここは洛中でこそないにせよ、この山のわずか数百メートル西側は京都府京都市伏見区の街なかである。
 京都という街は、塀ひとつ越えたら街路の喧噪も見事に消え失せる魔力を備えた街だが、まさかここまで見事な異世界を作り出せるとはオドロキである。
 鳥居も突然のようにめっきり数が減る。

《その一》で書いた下世話な話を蒸し返すようだが、やはり表玄関というか西側の総門から離れれば離れるほど寄贈者の人気が無くなるのか、それとも設置するのに手間賃が高くつくのか、はたまた昼なお薄暗い山間部の谷間で訪れる人が少ないと思われるからなのかは判らないが、表側のひしめくように立ち並ぶ鳥居ゲートとは対照的に、根元だけを残して再建されないままの失われた鳥居が増えてきて、ずいぶんと見通しがよくなってくる。

 しかし見通しが良くなって、今まで鳥居の狭いスキマから見ようとしない限り見えなかった周りの山の原生林的な実態が突然迫ってくる。
 さらに進むほどに生い茂る樹々も密度を増してゆくので、ますますあたりは薄暗くなってゆく。
 しかもこの道、上之社からの単なる下り道や帰り道などではなく、むしろ登ってきた時よりも個性的なお社が多くあるので、時間と体力が許せばぜひ縦断コースにチャレンジしていただきたいと思う。
 筆者にしてみればここからがワンダーランドだ。


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