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2010年現在、いわゆる32基ある山と鉾のうちで大型の『長刀』『函谷(かんこ)』『月』そして『郭巨山(かっきょやま)』は、洛中のメインストリートであり最も賑やかな四條通りで組立が行われる事もあって、まわりは常に観光客にとりかこまれてかまびすしい事この上ない。
元来、町衆と町衆が住まう家々や店にとりかこまれるようなカタチで“母港”となっているのだが、四條通りなどのメインストリートは早くからビジネス街化が進み、住民というカタチでは人がいなくなって久しい。
ほかの鉾町と違っていろいろとやりにくい事も多かろうと思う。
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この美しい木組みの上から、はるかシルクロードを渡って伝わった国宝級文化財である緞帳(どんちょう)やらペルシャ絨毯を垂れ幕として覆ってゆき、お馴染みの『鉾』や『山』の姿となるのだ。
鉾立の時のもうひとつのメリットは、構造の美しさと共に、ごく近くから屋根や装飾物の彫刻や絵を間近に観られる事だ。筆者はひたすら望遠レンズで切り取っているが、寄付したり、ある程度グッズを購入したら乗せて貰える場合もある。
あいにく筆者はその経験がないが、もしそれが叶ったらあの上からの視界をカメラに納めてみたいものだ。
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烏丸や四條の通りでは、居並ぶビル群のせいでむしろミニチュアみたいに小さく見えてしまうが、『その一』で紹介した『放下鉾』や『南観音山』のように、メインストリートから一本内側に入った道を母港とする昔ながらの鉾町に据えられているのを見ると、いくら屋根の低い京都の町屋の前とはいえ、実はかなり巨大である事が判っていただけると思う。
実際、小型でも数トン、大型のものは十数トンという重量があるのだそうだ。
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あいにくこうした美術品に関しての知識は皆無なので、どんな絵がどんな経緯で描かれ、彫刻ひとつをとっても誰の系列のなんという彫り方なのか…といった事がちんぷんかんぷんである。
が、しかし、御神輿や仏壇のように見えようと、美しいものは美しい。
精緻な彫刻、不思議な縁ではるか遠くの国から伝わった絨毯のいわれやロマン溢れる物語などは想像するしかないが、それも縁があればいずれ知る事ができるだろう。
それにしてもありがたい時代だ。こんなに大きな画像も、遠慮なく皆さんにご覧いただけるのである。
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山鉾巡行の本番は、人混みの頭、頭、頭でこの車輪などはまず見えない。ハイビジョン中継で名物“辻廻し”が放送されようとも、まず、車輪をじっくりと静止画で観る事はないだろう。
しかし、じつは、こんなにも美しいのである。
なにせ今のようにベアリングなどはない。木製の心棒に木製の車輪がはめ込まれているだけだ。それがとてつもない重量を支える上に、ゆっさゆっさと揺すられギシギシと軋みながら潤滑油代わりに水を掛けられながら回り続けて何十年。いや、部品によっては百年以上のものも使われているに違いない。
多少擦り切れていようとも、力強さと美しさが混在した“メカニック”の魅力がここに凝縮されている。
しかも、車輪ひとつでさえ、思わず居住まいを正したくなるほどの“貫禄”と“威厳”が備わっているのだ。
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───そうそう。鉾立の時期は、地元の企業や店がいわゆるファミリーセール的な特別セールを開いている事が多い。もちろん、ぶらりと立ち寄った観光客の“いちげんさん”でも大丈夫。扇やクラフトもの、浴衣に和装小物など、京都ならではの商品や、期間限定をあてこんだメニューなども見かける。
もちろん、それぞれの鉾町では縁起物の粽(ちまき)や銘入りの手拭いなどの“縁起物グッズ”も見ているだけでも楽しい。
巡行本番では人だらけでオチオチ見ていられないはずのこれらの店も、鉾立の期間はゆっくり見物し、豊富な品物をじっくり選べるのも魅力だ。
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