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 栂尾、槇尾、高雄。三尾を南方面へ“下る”という事は、それだけ下界───つまり嵯峨野方面からも来やすい場所という事なので、そのぶん、だんだん人が増えてくるということだ。

 高雄にはJRバスだけでなく、市バスの停留所もあり、嵐山高雄パークウェイの料金所もある三尾のターミナルになっているため、そのシンボルとも言える神護寺に近づくに従って、ずいぶんとにぎやかな雰囲気になってくる。
 こうした観光シーズンには、客を当て込んで焼き栗や団子を売る露店だのも出ている。

 上の写真は『高雄橋』。ここを渡って長い石段をゆっくりと登って行く先に、神護寺がある。

 栂尾から高雄まで、距離にしたら1kmほどで大したことはないのだが、見どころが多いためか、ぐるっと巡るとけっこうな時間が必要になるし、あちこち行ったような気になって満腹感もある。
 そのためだろうか。遠方やはたまた近郊より最初から“三尾征服”を目論んで来られる方はともかく、マイカー族などは高雄近辺だけにぶらっと来られる方も多いようだ。


 そしてそのピークは、神護寺への上がり口であり、バス乗り場を境にして、今度は急にまた人が減り始める。
 上右の写真は看板にあるように『高雄観光ホテル』、この建物がそのまま、清滝川を下る東海自然歩道への道と、神護寺への参道とのふたまたの分かれ道の基点となっている。
 そして上左は高雄橋から撮ったもの。
 左に伸びる長屋風の屋根の方へ行くと、自動的に東海自然歩道へ向かうことになる。

 服装もハイカー独特の、装備と呼ばれるようなものになってくる。逆に筆者のように普通の服装でいる人の方が少なくなり、すれ違う人がコンニチワと挨拶して通る。
 だが筆者は山歩きをしている気など最初からさらさらないものだから、まさか自分に掛けられたものとすぐに気づかないので、ずいぶん失礼してしまった。
 さきほどの道から、アッという間に清滝川の水面に手が届くまでに降りてこられる手軽さだ。

 そんな軽口が叩けるほど、この道は普通に歩ける道である。まわりは北山杉の幼木がずらっと植わっている。
 ようするにいわゆる林道なのだと思うが、実は神護寺に行った事のある方なら、この道の存在を知っておられるのではないだろうか。
 というのも、神護寺名物となっている『かわらけ投げ』をする時、はるか眼下に見える一本の道、それがこの道なのだ。それが証拠に、逆に下から見上げて望遠で捉えた写真が▼これだ。左が普通の人間の視力、右がアフリカのどっかの国の人の視力……いや、それは冗談だが、持ち前の望遠で撮った画像をのばしてみたらこうなった。

 もちろんその時筆者の眼には、左のような程度にしか見えなかったが、この記事のためにはじめてデータの原寸で見て驚いた。この中にすこぶるつきの美人がしっかり三人も写っていたのである。

 当たり前だが、みなこちらを見ていて面白い。きっと「あら、あんなところを人が歩いてるわ」と話しているに違いない。筆者もそうだったからだ。

 昔、筆者が神護寺を訪れてかわらけ投げをした時も、上から遠くに歩くハイカーが見えた。あの道にはどこから降りるのだろうか、あそこから見上げたらいったいどんな風に見えるのだろうか、投げたかわらけは当たったりしないんだろうか…とそのことがやたら気になった。

 実際には届くどころか、よほどの追い風が吹いてもまず無理だろうと思われるほどに距離がある。だがこれでやっと宿年の疑問が氷解したのだ。やはり実際に行ってみないとどんな事も分からないもんである。

 参考までに撮影時間は2008年11月15日16:25分。もしもこの時間に神護寺でかわらけ投げをされて居られた方、ぜひご連絡ください。しっかりお顔も写っているオリジナルのデータをお分けします。ちょっとないでしょう、このアングルでの記念写真なんて。

 ただし、やはり天候不順な日や、大雨の数日後は避けるのが賢明である。

 増水した川は危険だし、道もどこで崩れたり、また上から土砂崩れがあるかもしれないからだ。
 もっと単純な危険性を言えば、濡れて降り積もった落ち葉で足を取られる。泥道もないではない。

 間違っても時間に余裕のないスケジューリングで挑んだり、踵の高い靴などで歩こうなどとナメた真似だけはしてはならない。───まあ、そもそも観光目的の人で、こちら方面へコースを採るような物好きはそうそういないと思うが。

 あとの道のりとしては、清滝川に沿ってひたすらひたすら、嵐山を目指してハイキングコースを下ってゆくだけのことだ。写真では意図して人は写していないが、無人ではない。日暮れ時は違いが、それなりにハイカーが行き来している。

 ご覧のように、何度か清滝川そのものをまたいでゆくような箇所もある。といっても、加茂川や高野川にあるようなちゃんとした石の橋が渡してあるので、水に浸かっての移動なんて無茶はしないで済む。
 基本的に平坦に近い道で、初心者でも歩きやすいハイキングコースだと言えるだろう。


 だいたい、上のような雰囲気の道で占められている。いちおう、左から右下へ、歩いた順番に撮影している。
 この二日ほど前に雨が降ったと記憶しているが、ぬかるんだ所はそれほどなかった。筆者はすりきれたとはいえ、底が厚めのスニーカーで歩いている。やはり、気をつけるべきは濡れた枯葉とその下に隠れている泥。

 どんどん歩いて行くうちに、土と岩の沢道からふたたび舗装された道へと上がってくる。
 そうすると『愛宕山登山道』の標識に出くわす。写真の橋は『金鈴橋』。もう、東海自然歩道から抜け出しているのだ。
 さらにその300mほど先に『一文字屋食堂』という店に隣接して、嵐山へ向かうバス停があるが、地図で見ると、あと1kmほどで懐かしの奥嵯峨エリアにたどり着くと判明。
 もぉこの際なので、もうひとがんばり、と嵐山までのこりの行程を歩く事にした。

 せっかく山を降りてきたが、いったん、もう一度坂道を登ることに。
 2〜300mほど登ると、ふたまたに分かれた道に出る。左はさらに山を登るのだが、驚いたのは右側の道。
 地図を見るとそれは『清滝隧道(きよたきすいどう)』という“試峠”という峠の下をくぐるトンネルになっていた事である。トンネルというのは基本的に自動車専用ではないか、という先入観があるので何度も確認した。人も通って構わないとはいうものの、じっさい車一台となんとか人の通れる幅のものである。
 まったく先が見えなかったことには驚いた。それもそのはず、約450mというなかなかの長さ。
 さいわい、通り慣れておられるらしき初老の夫婦が先を歩いておられたのと、途中で曲がっているために、中ほどにさしかかるまでは出口が見えず、距離感がつかめないので、自分たちだけだと結構な不安感が伴う。また気分的な問題で、歩いても歩いてもナカナカ出られない気がするという、楽しいものである。

 さてトンネルを抜けると、嵯峨鳥居本(さがとりいもと)という所に出る。
 狭いトンネルでクルマがはち合わせしないのかしら、と思っていたら、答えはコレだった。出口入り口でちゃんと管理されてて、一方通行になっていたのである。
 そしてトンネルを出たばかりの所に、別ページに記載した『愛宕念仏寺(おたぎねんぶつじ)』があるのだ。じつは、その記事はこの続きで体験取材したものである。ここはちょっとしたオススメの穴場なのと、筆者にとっては『ぶら旅』想い出深い寺でもある。なので、別ページでご紹介した次第である。
 そして、
黄昏時の嵐山を歩くという幸運に恵まれたのである。

 それについては《その四》で。

▼高雄〜東海自然歩道周辺の地図はこちらから▼